コンテンツ

和歌山利宏氏にテストライドして頂きました。

201652617814.JPG

和歌山利宏氏は、2輪車体メーカーやタイヤメーカーの製品開発テストライダーだった方で、
現在はモーターサイクルジャーナリストとしてご活躍中です。
この度ご縁があり、当社の製品のテストをお願いいたしました。
氏の製品インプレッションや分析に関しては、二輪業界の専門家の間でも信頼度が高く正確だと評価されています。

この内容はBIG MACHINE誌 2014年10月号No.232、BMW BIKES誌2014AUTUMN No.68号に掲載されています。
またバージンBMWの下記のサイトにも記事が掲載されています。

//virginbmw.com/enjoy/truetest/42.htm

 
今回最も印象的で、走行フィーリングに好影響を及ぼすと認識させられたのは、チタン合金(Ti-6Al-4V)製のシャフト、ボルト類の威力である。単なる軽量化に留まらず、その変形特性が、モーターサイクルの諸過渡特性やコントロール性、フィードバック性を向上させており、軽量化そのものよりも、そうした効果でのメリットに驚かされた。

チタンの素晴らしさは、弾性に富みながら、高強度であることだと思い知らされた。
チタンを用いると、締結部分の変形が大きいことになるが、そのことが剛性不足というデメリットを生むことなく、
豊かな変形がメリットを生み出してくれる。変形特性に優れ、変形に抵抗(ヒステリシス)がないという印象である。
ワークスマシンには一般的に、こうしたチタンボルト類が多用される(アクスルシャフトには車輌規則で使えないが)。
これまで数多くのワークスマシンに試乗し、それぞれに忠実なコントロール性や豊かなフィードバックに感心させられてきたものだが、
ひょっとすると、それはチタンの特性に負うものが大きいのでないかと思った次第である。

また、チタンボルト類とは別に、パワーチップ、オイル添加剤、FFグリスといった商品も試したが、
これらもそれぞれに走りを高水準化させていた。これらには静電気を除去する効果があるそうで、
これまで私の機械工学をベースにしたバイクへの考え方では説明の付かない領域にある。
が、走行特性を理想に近づけていることだけは、紛れもない事実であった。

供試車R1200GS-LC
チタン製フロントアクスルシャフト

しなやか、かつ操縦性が高いことは、走り出してすぐ明らかになった。
一般的にしなやかな安定性と操縦性は相反するはずで、一般的なものとは異次元のフィーリングである。
まず、路面追従性が良く、突き上げに対しても吸収性が良くて固さが減少。
また、故意にステアリングをこじても、伝える外乱に対して唐突な挙動に発展しにくい。
しなやかであっても剛性不足感がなく、外乱と挙動を吸収、安定性が高まっている。
そして、いい意味での上質な弾性効果がアクスル部に生じており、
そのことが応答性のみならず、旋回性やラインの自由度の高さに繋がっている。
推測するに、前輪にキャンバーが付き始めたとき、ジャイロ効果によってその方向に舵角を付けようとする効果が生じるが、
アクスル部の弾性によってその効果が応答良く生じ、そのことがステアリングレスポンスや操縦性の良さに現れているのではないだろうか。
チタンは縦弾性係数が鋼の2分の1~3分の1程度であり、弾性効果を得やすいものの、
もし鋼でその弾性効果を得ようとすると(強度的には問題だが)、剛性不足という問題が生じることが考えられる。
ところが、比重の小さいチタンの変形にはヒステリシスも小さく、変形と戻りが忠実に生じ、かような好結果を生んでいるのではないか。
また、表面のフレッシュグリーン処理によって、ベアリングインナーとのフリクションも低減されているはずで、
この表面処理もチタンの弾性効果を生かすことに貢献していると思われる。このシャフトによって軽量化が実現されており、
そのことによるバネ下重量軽減効果は、悪い方向に作用していることはないにせよ、
絶対的なメリットを生んでいるとは思えなかった。この軽さは変形特性に貢献していると考えるのが妥当だ。

供試車K1300R
チタン製フロントアクスルシャフト


 R1200GSでの初印象が強烈だったため、K1300Rではそのことを再確認したに留まるが、内容的にはR1200GSの場合と変わることはなく、
大変に好印象である。いや、ひょっとすると、こちらのほうが効果が大きいのかもしれない。
GSよりも高い旋回性能を生かすべく、さらに攻め込んだ走りをする気にさせてくれたからである。
しなやかさと自由度の高さが乗り手を積極的にさせ、そのことにチタンシャフト装着のK1300Rが応えてくれるというわけだ。