人から何と言われようが、良いモノを作りつづける
-「できない」とは言いたくない、お客さんの期待に応える一徹経営者-
株式会社ランドマスター 代表取締役 金光 利久
車やバイク好きの人が、今、注目する製品がある。チタンエアバルブキャップ。１個3,500円（税別）。これを使うことによって、車やバイクのハンドル操作が軽くなるらしい。販売しているのは、神奈川県横浜市の株式会社ランドマスター。昨年10月の発売から7か月でおよそ4,500個を完売した。製造した分はすぐに売り切れ、現在も品薄状態が続いている。「よく、こんなにたくさん売れたな。」代表取締役の金光利久は、照れくさそうに話してくれた。
金光が起業したのは、2010年1月。中古の商用車を販売する大手の会社に勤務していたが、リーマンショックで業績が悪化したためだ。「車は大好きなので、この仕事だけは、続けていきたいと思った。」そんな金光にも容赦はない。翌年の東日本大震災。中古車を販売したくても、市場に車が出てこない。資金が底をつく。
金光が2005年7月にはじめたブログ。タイトルは「果てしなき夢を追い求めて」。車やオートバイに関する内容がほとんどだ。先の見えない中でも、毎日、毎日、ブログを更新し続ける。「自分は、何ができるのだろう。逆に見つめなおすきっかけになった」。部品を見る目。これは誰にも負けない。誰も作ったことがないものを、オリジナルで作って販売しよう。
最初の製品はオートバイのフロントホイールのチタンシャフト。シャフトにチタンを使うことで、コーナリングが安定するなど、乗り心地がしなやかになる。「まずは、自分が欲しいものを作ろう。売れても、売れなくても良い」。腹を括った金光。それが吉と出た。ブログにアップすると、自分のも作って欲しいという読者からの声が殺到。1本10万円という金額にも関わらず、300本が売れた。
シャフトやボルト、静電気除去装置など、これまでに扱ったアイテムは60種を超えるが、すべてがヒット作というわけではない。友人から作って欲しいと頼まれて製品化したボルトは、40本しか売れなかった。「『お前なら、作れるだろ』という期待に応えたい。できないと言いたくない」（金光）。 お客さんから「『あの会社に言ったら、作ってもらえた』『あそこに行ったら、全部そろった』と言ってもらえるのが、一番うれしい。だから、俺は、人から何を言われようが、良いものを作っていく」。金光の信念は、岩より硬い。しかし開発が主体の会社は苦労の連続だ。利益は開発費に消える。台所は火の車だ。
製品にかける情熱は熱い。金光の大きな本棚には専門書や技術書が所狭しと並ぶ。欲しい情報があれば、日本全国どこへでも出かけていく。新しいアイデアを何度も何度も紙に落とす。わずかな可能性も見逃さない。びっしりとメモが書かれボロボロになった何冊ものノート。「一度断念した方法や材料も、別の製品では生かせるかもしれないじゃないですか」。こういう材料が欲しいとメーカーに製造を頼み込む。大手企業にも「なんとか入手できないか」と、掛け合って原料を分けてもらう。その中には時代の最先端を行くような原料もある。製品にも妥協を許さないが、自分にも妥協を許さない。
頑固で、強面に見える金光も、愛猫のムギちゃんの話になると、目を細める。「保護猫の里親を探すボランティア団体から、引き受けた。本当は犬が欲しかったのに、娘達が『猫が欲しい』と大反対。でも、今は、一番俺になついているんだよな」。実は、娘にも猫にも甘いのは、自分の過去の経験が影響している。「一番辛かったのは、起業した時、俺には頼る先がなかった。今の俺なら、助けてやれる。だから、好きなことをやって欲しい。そして、人から喜ばれる存在になって欲しい」。
金光は「俺には、夢がない」と話すが、本当は大きな夢を持っていると確信した。「ものづくりは、お金がないとできない。世間に評価されないと、広まらない。だから、俺は、強い想いがあるけれども資金がない、発信力がない若者を、将来は支援していきたい」。良いものを作っていかないと、未来はない。金光の言葉に、魂が震える。
取材 大内 優
Profile 金光利久 1963年大分県宇佐市生まれ。株式会社ランドマスター代表取締役。 大学卒業後、地方公務員や会社員を経験し、2010年に株式会社ランドマスター・ジャパン（現 株式会社ランドマスター）を設立、パワーモジュールやエンジン添加剤、カーパーツなど、快適なカーライフに必要なアイテムを製造・販売している。オービトロンやゲルマンパワーなどといったパーツブランドも確立しており、これらの製品は性能の高さから、プロのモータースポーツ選手も好んで使用している。
オービトロン WEB CM（FES☆TIVE桃原ひよ・青葉ひなり出演）
