オービトロン マイクロリアクターのバインダーは何が変わったのか

オービトロンの旧製品「パワーモジュール」と新製品「マイクロリアクター」のマテリアルは、大きく変化しています。マテリアルとは、内部にある金属板に塗布しているもので、ベースとなるバインダーに触媒を加えたものです。

このバインダーですが、旧パワーモジュールではシリコーン樹脂を使用していました。このシリコーン樹脂は非導電性です。オービトロンのエネルギーは導電・非導電にかかわらずトンネル効果で伝搬していきますが、効率の悪さは否めません。なぜこんなものを使っていたんだろうと、今になって考えれば疑問に思います。マイクロリアクターではここを見直し、導電性のバインダーを使っています。この導電性バインダーは、使っている金属との相性が悪く、普通に施工してもまったく定着しません。金属板に塗ろうとも、乾燥しはじめるとすぐにペリペリと剥がれてきます。しかも乾燥の速度が数秒と非常に速いのです。定着性を向上させるために金属板には特殊な機械加工を加えています。この機械加工はバインダーを塗布するためだけのものでは無く、エネルギーの向きを整えて効率を上げる目的もあります。事実、この加工をすることで能力の向上がありました。そしてこの金属板にマテリアルを塗布していくのですが、マテリアルの内部に金属板との結合を強くする物質を入れる事により、密着度を上げています。

パワーモジュールでは、バインダーが非導電性だったために集電板を必要としていました。マテリアル、反応性金属、集電板の三層構造でした。マイクロリアクターでは導電性バインダーを使うために、集電板の必要性が無くなりました。反応性金属と導電性マテリアルの二層構造です。構造がシンプルになって効率が上がりました。また、ダイレクトにコアとケーブルと接が続できます。このためにコア自体が極薄になり、コア枚数はこれまでにないほど増えています。その枚数は小さなMーXですら、旧パワーモジュールF22 GーSpecの枚数を超えています。

このバインダーには種類がいくつかあります。そして使用用途に合わせて配合する触媒を変更しています。マイクロリアクター用のバインダーは4種類。現在はその中の2種類を使っています。この2種類はゴールドマテリアルとプラチナマテリアルと呼んでいます。ゴールドマテリアルは比較的安い方なのですが、それでもシリコーン樹脂の数十倍の価格です。プラチナマテリアルはそのゴールドマテリアルの更に数倍の価格で、これは現在のところマイクロリアクターのDual2.0とQuad2.0に使用されています。全モデルにプラチナマテリアルを採用したいところですが、そうなると価格の大幅な上昇に繋がってしまうため、マイクロリアクターDual2.0とQuad2.0に限定して採用しています。

話は変わりますが、一緒に新しくなったペースト用のバインダーのことも書いておきましょう。ペースト用のバインダーは、以前のものでは金属系のグリースを使用していました。それはそれで性能が高かったのですが、導電性はありませんでした。また金属含有量も多くはありませんでした。今回のバインダーは電気伝導性も熱伝導性も高く、求めている性能をクリアしています。

バインダーの説明をしてきてましたが、これらのバインダーはメーカーとの共同作業で生み出されたもの、あるいは特別オーダー品を当社の手で再加工してベースにしています。そしてこのことについては昨年特許申請しています。